矯正歯科の可能性
矯正医と口腔外科医が相談して、矯正治療の範囲、術前矯正の開始時期、外科手術の方法、術後矯正の期間などを十分検討相談したうえで、まず矯正治療がスタートする。
術前矯正に外科矯正は骨の手術を含むため、顔付きなどは相当変化する。
噛合の細かい点は、どうしても後戻りしやすいので、ややオーバーの治療が必要である。
歯の裏側にブラケットを使うリンガル・アプライアンス(フジタ・メソッド)でもないようです。
矯正治療でない証拠に、肝心の歯並びはいつまでたっても、変化なしです。
テンプレートで噛合を治すのは、広い意味でなら矯正といえるかもしれませんが、私どものいう歯列矯正ではないのです。
私はテンプレートの専門家ではありませんが、この装置は非常に面白い理論に基づいて開発されたものです。
テンプレートは、J博士が命名したもので、新しい噛合理論に基づいた噛合挙上床の一種です。
このレジン製の入れ歯は厚みがあって、口に入れると上下の前歯が10ミリ以上も開いてしまうほどです。
わざわざそうしているのです。
噛合高径を挙げるといいます。
これによって、頚の骨のそばを通っている動脈の流れ(椎骨動脈流)が良くなるためと、自律神経系の反応でたちまち手指皮層の温度の上昇をみたという発表もあります。
姿勢が良くなったということも聞いています。
運動選手が、ひそかにこのテンプレートを使っているという話も聞いています。
ゴルフのショットがぶれなくなるということも、あるいは事実かも知れません。
スイングする時に奥歯をしっかり噛んでスイングしてみて下さい。
臼歯で強く噛んだままでは、ボールはきっとブレルし、飛距離もでないと思います。
ただ、このテンプレートを口に入れても、それは歯並びの矯正の力はありません。
だから、これと矯正を取り違えないで下さい。
また、O先生(N歯科東洋医学会副会長、東京・葛飾、埼玉・浦和市開業)が解剖学的・生理学的理論にもとづいて、噛合と全身の関係から見た独自の東洋医学的治療法を展開され、多くの治験例を報告しています。
氏の報告例の中に、上下の第一小臼歯を抜いて矯正治療をしたために、頭痛、肩こり、首筋のこりなどの不定愁訴がでたという患者さんの例が紹介されていました。
その時の噛み合わせの写真で見るかぎり、指摘の通り歯並びは治癒していません。
明らかにこの矯正治療は不完全なものこの患者さんの噛合は、Aの分類で3級2類といわれる日本人には珍しいものです。
治療方針には独特な注意が必要な例です。
確かに、上下それぞれの歯列は以前よりは良くなったかもしれませんが、問題の上下の噛み合わせは、なんら改善していないのです。
これなら年齢がたてば、きっと顎関節症をおこすでしょう。
むしろこの例は、不注意なあるいは未熟な矯正治療をすることに対し大きな警鐘になるものです。
歯の配列だけに注目して、肝心の上下のあごの関係には手がつけられていないのです。
これでは矯正治療とはいえません。
この例は、不幸にして未熟な矯正治療の例によるものですが、噛み合わせが深く、不安定であるために、全身に異常がでてもおかしくはありません。
この種の噛合の人は、姿勢が悪いため、血行も悪く、肩こり、めまいの原因になり、血圧上昇につながる可能性が十分あります。
噛み合わせを治して、胸を張って姿勢をよくし、時々深呼吸を心がけることが全身の健康保持に大切です。
噛み合わせを、単に歯の問題として取り上げるのでなく、全身への影響という視点で考えてゆくことは、これからの歯科診療にとって、大変大事な新しい方向であると考えます。
これから高齢化社会を迎えるのですが、いまやこの問題は他人事でありません。
成人の読者の方も多いと思いますが、自分もその有力メンバーの一人であることを忘れないで下さい。
生涯自分の歯で楽しく食事をするために、少しばかり長期的な作戦を立てて、矯正治療に挑戦してみてはいかがですか。
ブラケットが口に入ることぐらい我慢して、早く始めて早く終わることです。
仲間にもきっと、真似をして矯正治療をする人が増えることと思います。
いわゆる治療費ですが、昔は患者さんが「お礼」の意味で、畑でとれた野菜やお米を届けたりしたものだそうです。
「料金」でなく、「報酬」といったのはそのためです。
現在でも、健康保険の治療について「診療報酬」という言葉が使われています。
医者になって、いい生活をしようなどと思って医学部・歯学部に入ってきた連中が聞けば、度肝を抜かれるかもしれませんが、医療というものは本来そういうものです。
生命を救うのにいくら払えば助け、払わなければダメ、ではもはや医療ではありません。
医療は普通の意味の「商売」ではありません。
だから事業税を払わなくてもいい筈だと私は思います。
いまでも領収書には収入印紙を貼りません。
はっきりと印紙税法上の規定があります。
ただ現代の経済優先の時代に、野菜やお米だけを貰っても、医者の方も困ります。
医者もお殿様の侍医は別として、霞を食っては生きてゆけず、また医療の先進性を保つにはそれなりの設備投資も必要だし、だいいち看護婦さんの人件費はもちろん、確保のための経費(いまは支度金なども必要になりました)も用意しなければ、いい人材も集まらない時代です。
治療費がどの程度なのかは、一番関心の高い問題だと思います。
雑誌社の取材などで、大学病院での治療費は基準になるのではないか、とよく質問を受けますが、それは違います。
確かにそういうこともありましたが、矯正専門で開業している先生が少なかった頃の話で、20年も前のことです。
現在、矯正歯科専門の診療所は全国で404カ所あります。
まだまだ人口に比較して少ないのですが、この中には長年、大学で教授・助教授・講師であった方が開業されている例も、大変な数になっています。
もう治療の全ての面で、大学と専門開業医の間には、アメリカ同様その差が全くなくなりました。
むしろ大学は、なんといっても学生の教育機関であり、また若手の矯正専門医の卵の養成機関ですから、大学病院の教員の目は、患者さんと学生の両方に向いています。
つまり、臨床と教育が同時進行で、一人二役どころか研究の仕事を加えれば一人三役で、正直なところなかなか手が届かない部分もあります。
私の長い大学病院での経験を正直にいいますと、先端的な研究や実験は別として、どこの大学病院でも普通の医局員の治療内容は、決してベストとはいえず、現代の一応の水準程度で、特に最高の水準とはいえません。
診療時間にしても学校ですから必ず制限がありますし、担当医が時々代わるというやむをえない事情なども、治療の経過に時間がかかる傾向を助長するようです。
大学と診療専門の病院との違う点を、ご理解頂きたいと思います。
治療上の新しい技術の習得に関しては、むしろ専門開業医の方が熱心に国内・国外の研修に出かけ、学会やスタディ・クラブに所属して勉強しているのです。
もっともその分、経費的にも余計な出費がかさみます。
そういう点からも大学の料金規定は、基準にはならないのです。
健康保険の診療報酬は、大ベテランの先生でも駆け出しの若手が治療しても、その評価は同じというメチャクチャな制度で、これまた全く参考になりません。
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